初夏の奈良・西ノ京ロータスロードを楽しむ
今回は奈良へ足を延ばして、この時期見頃を迎えた蓮の花を楽しむべく、奈良・西ノ京ロータスロードを散策してきた。京都方面から近鉄奈良線を利用し、大和西大寺駅で下車して、そこから「西大寺」「喜光寺」「唐招提寺」「薬師寺」を巡る、5kmほどの道のりだ。散策のスタートは西大寺の重要文化財「十一面観音立像」を鑑賞したあとに、愛染堂を拝観しつつ裏の蓮園に足を運ぼう。つぼみのもの、満開のもの、見頃を過ぎたもの等大証様々な赤・白の蓮が100鉢ほど並ぶ様はなかなかのものである。尚、寺内本堂や四天堂周辺にも蓮の鉢が並べられているが、蓮園は愛染堂を拝観してからでないと行けないので、うっかり見逃さないよう注意が必要だ。
続いて、喜光寺に足を向けよう。ここからは西大寺町から菅原町と街中を歩いていくことになる。ロータスロード散策に趣旨とは少し外れるが、道すがら菅原道真公とその祖先をまつる、日本最古の天満宮と言われる菅原天満宮をお参りした。境内には筆塚もあり受験シーズンには合格祈願の人で賑わうようだが、受験にはもう縁のない私は筆塚の前で、いつまでも学徳向上に励めるよう手を合わせた次第である。
それでは元のロータスロードに戻り、本来の目的地である喜光寺へと向かおう。喜光寺は奈良時代の創建で、東大寺大仏殿の建立のための拠点とされたと言われており、本堂はその雛形として建てられたとの言伝えから「試みの大仏殿」と呼ばれているそうだ。こちらの境内には250鉢もの蓮の花が、ところ狭しと並べられ見る者の目を楽しませてくれる。さて、ここからは唐招提寺へと足を延ばすことになるが、途中は奈良の田園風景を楽しみつつ、思わぬ光景にも遭遇しての道歩きである。唐招提寺へは基本は近鉄の西ノ京駅を目指して歩くことになるのだが、途中右手に小高い里山に、これまで見たこともない程の白鷺の大群が群れている異様な光景に驚かされた。その訝しげな光景を眺めつつ歩くと、里山の麓に池らしきものが現れ、次第にそれが広くなり、やがてそれが濠に囲まれた巨大な前方後円墳である垂仁天皇陵(宝来山古墳)だと気づかされる。そう気づくと、先ほどの白鷺の群れも神様に歓迎され、幸運を告げる兆しに巡り合えたと思えるのである。
白鷺に見送られ垂仁天皇陵を後にすれば、唐招提寺まではもうすぐそこである。世界遺産にも指定される唐招提寺は律宗の総本山であり、唐の名僧鑑真和上が建立され、奈良時代建立の金堂や講堂が、今も天平の息吹を伝えている。南大門から広い境内へ入れば、金堂・講堂は勿論のこと、仏像や経蔵、宝蔵等の国宝が次々と姿を現し、そちらを眺めて回るだけでも飽きることはない。更に境内の一番奥にある。鑑真和上御廟につながる小径には、京都の有名な苔寺に負けず劣らず美しい苔庭が広がり、こちらも是非見ておきたい風景だ。さてこちらの蓮だが、金堂の前と復興中の薬草園に蓮鉢が並べられており、金堂と相まって美しい景色を見せてくれているので、悠久の景色に想いを馳せながら蓮の花を愛でるのも一興である。
それでは、ここからいよいよロータスロード最後の目的地である、薬師寺へと足を運びたいところだが、そろそろ昼近くなり空腹も感じてきたところなので、残念ながら今回はここまでとして、西ノ京駅へと向かうことにした。奈良と言えば東大寺と奈良公園が真っ先に思い浮かぶが、今回の西ノ京周辺は新たな発見もあり、かつ半日ほどで楽しめる手頃なエリアとして今後も注目したい。