京都一周トレイルRound5
京都一周トレイルRound5、今回はケーブル叡山駅から大原、戸寺へと向かう北山東部コース1、全長約10kmのルートです。比叡山の山並みを辿る京都一周トレイルで最も山らしいルートの一つでしょう。11月に入って朝晩はめっきり冷え込むようになり、京都にも本格的な秋の訪れがやってきた。特にここ比叡山周辺は紅葉真っ盛りのシーズンで、京都市内中心部はまだ色づき始めたところだが、比叡山のトレイルをちょうどこの時期に楽しめるのも幸運の印と、市内から電車を乗り継いで足を運んでみた。スタート地点はケーブル比叡駅の裏手の標識からスキー場跡を通り、右手に比叡山を望みながら延暦寺方面を目指そう。途中つつじが丘のベンチで一休みすれば、北山の山並、横高山の尾根の眺めを満喫できる。
再びトレイルコースを暫く歩けば、いつの間にか比叡山延暦寺の境内に足を踏み入れるが、新鮮な空気を楽しみながら道を辿れば、左手にちょっと見落としてしまいそうな奥比叡ドライブウェイに掛かる歩道橋が現れる。橋を渡れば目の前は山王院、そして左手の石段を下っていこう。辺りは境内でも最も厳かな聖域だ。聞こえるのは砂利を踏む自分の足音のみ。束の間、心が現れる時空が流れ、厳かな気持ちに心が満たされる。そして階段を下りきると、そこには見事な紅葉に彩られた浄土院が姿を現す。鐘の音だけが流れる空間で思わず手を合わせてしまう。
浄土院を右手に見ながら参道を辿っていくと右手に椿堂へ降りる石段がある。トレイルコースは参詣エリアではなく、椿堂を左手に見ながらこちらの細い草むらの小道を進んでいく。一見すると森の中に迷い込んでしまいそうで注意が必要な道だが、そのまましばらく行くと正面に釈迦堂が見えてくるので、安心してほしい。
ここから先は峰通まで修行僧が辿る道を進んでいく。奥比叡ドライブウェイを小さなトンネルで潜り抜けると回峰行道(峰通)に入る。府県境の尾根は、杉の大木でいっぱいの延暦寺の境内エリアとは違い、ドライブウェイ沿いの紅葉を満喫しながら、のんびりとトレイルを楽しむことができる。青龍寺からの道と交差するあたりに、ドライブウェイを超えた反対側で少し分かりにくいが、峰道レストランがある。天気に恵まれたこの日は、こちらから眼下に琵琶湖の絶景を眺めることができた。
再びトレイルコースに戻り、ハイウェイ沿いの峰道を進もう。道はアップダウンが続くがかなり整備されている。しばらくは比較的歩きやすい道が続くので、静寂を楽しみながらゆっくり歩きたい。しかし、ハイウェイ沿いから離れると道は狭く荒れた姿を現し、注意が必要だ。ここを登りきると玉体杉に出る。こちらも東西に滋賀・京都が見渡せる絶好のロケーションだが、残念ながら滋賀側は木立に覆われて見渡すことができないので、京都八瀬から大原方面の景色を楽しみながら、昼食休憩としよう。この辺りではトレッキングの人もちらほらと行きかい、秋の比叡の山を楽しむ良い季節だ。
さて、腹ごしらえを済ませ、一休みしたところで再びトレイルコースへ戻ろう。横高山を目指して尾根を下っていくと、峰辻の案内板、せりあい地蔵が目に入ってくる。こちらで東海自然歩道と交差するのだが、トレイルコースはまっすぐ横高山(別名釈迦ヶ岳)山頂を目指して直進する。東海自然歩道の標識が右方向に横川、仰木峠方面と出ており、横高山への登り路が目立たないので、ここも注意が必要だ。ここからは一気に山頂方面へと急な上り坂を上り詰めていかないといけない。台風の影響かかなり登坂路も荒れて歩きにくい上に、年齢や普段のトレーニング不足も考慮して、息を整えながらゆっくりと登って行きたい。
横高山を過ぎるとしばらくは下りが続き、トレイル案内板15からは再び登りになる。こちらも急な登りが続くが、先ほどの横高山と違い一気の登りではないので、長めの登りをやはり慎重に進んでいきたい。しばらくトレイルすると京都一周トレイルの最高地点(793.3m)の水井山山頂へ到達する。辺りは残念ながら視界も開けておらず、台風の影響で倒木や枝葉が散乱しているので、眺望を楽しむどころか足元の注意が必要だ。とは言うものの、横高山、水井山と続いた登りの疲れを癒すためにも、しばらくこちらでも休憩を取りたい。
ここからは大原・戸寺に向けて尾根を下って行こう。まずは長い下り坂を辿っていくと途中、東海自然遊歩道との分岐がある。しばらく下りが続くので足への負担もかなりある。下りと言えども慌てず、慎重に進んでいきたい。更に下って行けば平坦な道のりとなり、しばらくすれば仰木峠にたどり着く。但し、途中には台風の影響か倒木が道を塞ぎ、その下を潜って通るなど危険な箇所もあるので注意したい。仰木峠は大原の里(京都)と仰木の里(滋賀)を結ぶ峠で、牛若丸が鞍馬から奥州平泉へ逃れる際にここを通ったと言われているそうだが、今日は逆のコースでここから大原方面へ辿っていく。ここからは東海自然歩道と共有された少し広めの尾根道を進むのだが、ここにも倒木がいくつかあるので注意が必要だ。
しばらく歩くと自然歩道は三千院方面へ向かうが、トレイルコースは左手にあるボーイスカウト道への分岐へ向かうことになる。ここを下れば林道出口だが、この最後の急勾配はかなりきつい。ボーイスカウト道は狭く、荒れて、勾配も急なのでそろそろ疲労が溜まってきた身体には十分注意が必要だ。ゆっくり慎重に下ろう。そして沢の音が聞こえてくれば、すぐそこは亀甲道で沢の左右を行きかいながら、トレッキングを楽しみつつ、最後の下りの疲れを回復しよう。林道出口のフェンスを出れば、あっという間に日差しが降り注ぎ、林の中の静寂から一気に明るい下界へと足を踏み入れる。戸寺のバス停はもうそこだ。
紅葉目当ての比叡山系の縦走で、浄土院やドライブウェイ沿いの紅葉も見事だが、延暦寺の荘厳な静けさや周辺の山々の凛とした佇まい、琵琶湖や大原の雄大な景色と、予想以上のトレイルを満喫できた、約4時間半の道のりでした。